つくづく大変な時代になったもんだと思う。
もはや会社の先輩であろうと出世できなければ後輩と同等の立場である。そしてその出世できない社員が増えてきている。
そうなると、仕事を覚えるのが早く、新しい考え方に柔軟に対応できる後輩はどんどん評価され、古い時代の考え方で無駄にプライドの高い先輩はお荷物社員となる訳だ。
実際に私の会社もこのような構図になってきた。時代がそうさせたのかもしれない。
先輩は後輩に媚びを売るようになった。もやは威厳など感じられない。
後輩は先輩がうっとうしく感じるようになった。給料泥棒め、という目でみており敬意など感じられない。
部署を取りまとめる中間管理職も元気がない。上のポストは減っていき、昇格の見込みがない。仕事なので空元気でムード作りはするものの、どこか冷めた印象は拭えない。
先輩は思う、少しでも長く会社に居座りたいと。後輩は思う、少しでも早く先輩を追い出したいと。
そんな中、社内レクリエーションが始まった。この閉塞感を少しでも打破したいという経営者の発想だ。
先輩は色めきだった。会社に絆を強く求める世代だからだ。後輩たちは面倒くさがった。会社よりも自分の時間を優先したい世代だからだ。
結局、レクリエーションは先輩たちのはけ口となった。いい会社だ、いい仲間だと再認識する場になった。
後輩は疲れた。雑用をやらされ、気を遣い、貴重な自分の時間が奪われたので疲れた。古い会社だ、自分の価値観には合わないと再認識する場になった。
ただ一つ、同じ時間を共有し、会話が生まれたという事実は残った。
経営者は満足した。社員の結束力が高まったと、表層を見てそう思った。
好景気が終わり、時代は不景気に突入した。人手不足といわれていたのが一転、人余りの時代になった。
会社の業績を理由に、人員整理が始まった。そして先輩は会社を去った。後輩は年齢のセーフティーネットのおかげで会社に残った。
後輩はいつの間にか会社の主役となっていた。ほんの少し楽しくなった。自分の時代がきたと思った。そして、後輩は、、、先輩になった。
時代は不景気が続き、採用は減り、ポストも減った。先輩となった後輩は、息苦しくなった。
長引く不景気で会社はますます苦しくなった。仕事量は増えたが給料も休暇も増えることはなかった。そしてまた、人員整理を始めた。
先輩となった後輩は会社を去った。そして新しい人生を歩み始めた。
ようやく自分の人生を歩み始めた。
~完~
生まれた時代は選べないのですが、人の一生において生まれた時代はかなり重要です。そんなこと言ったら、「生まれた国だって重要だし、そもそもこの世に生まれるかどうかが重要だろうが」って先輩が吠えそうです。
はぁ、そうですね。と適当に相槌を打った後輩は、めんどくせぇなぁと心の中でつぶやき、うっとうしい先輩ににらまれないように愛想笑いをするのでしょうかね。
どの時代でも仕事を楽しめる人はいなくならないです。分かってます。でも、より多くの人が仕事を楽しむためには、「時代」を肌で感じて相応の達成感や幸福感を設定することが必要なのです。
過去の価値観にとらわれていると楽しめないってことです。
価値観を今の時代に置き換えて、考え方、働き方を変えていければ、仕事を楽しめる人が増えるんでしょう。仕事に楽しさを求めるならば、ここが肝かと思うのです。
最後までお付き合いいただき有難うございます。